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プレイバック~1969.10.30 あの一瞬のプレー

故・三村敏之さんに続いて、故・土井正三さん名場面にプレイバックします。
V9ジャイアンツを支えた寡黙な名プレーヤー(バイプレーヤーと呼ぶのは失礼でしょう)、土井正三さんの名場面といえば、真っ先に挙がるのが69年の日本シリーズ第4戦。岡村捕手の頑丈なブロックのわずかな隙間に差し込まれた左足がベースタッチして、そこから一気に逆転し、シリーズの流れを掴んだシーンです。

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巨人、あと1勝で日本一
阪急に不運の判定~4回 重盗刺せず、気落ち

後楽園 29,900人
阪急 011 101 000|4
巨人 000 602 10X|9

勝:堀内2勝
敗:宮本1敗
本塁打:長池1号(高橋一) 石井晶2号(渡辺) 王1号(戸田)

阪急
(左)  正垣
(遊)  阪本
(三)  森本
(右)  長池
(中)  大熊
(一)  石井晶
(捕)  岡村浩
 二  中沢
 打  ウィンディ
 投  戸田
 打  アグリー
(投)  宮本
 打  八田
 投  大石
 打  矢野
 捕  岡田
(二)  山口 


巨人
(左)   高田
(二)   土井
(一)   王
(三)   長嶋
(遊)   黒江
(右)   国松
 中   柴田
(中)右 末次
(捕)   森
(投)   高橋一
 打   森永
 走   山下
 投   渡辺
 打   槌田
 投   城之内
 打   相羽
 投   金田
 投   堀内

4回の大波乱は阪急にとってまったく不運というほかはない。そして全体の印象としてはあと味の悪い試合になった。阪急は長池、石井晶の本塁打と阪本の長打で3点をリード。しかも宮本が巨人打線をガッチリと押さえて優位に立っていたのだが…
この回巨人は土井、王の安打で無死1・2塁。長嶋が打席に入った。これまで3本塁打。打率も5割8分3厘と最高潮の長嶋を宮本がどう抑えるか。もし長嶋を打ちとれば阪急の勝利は一歩近づく。巨人にとってもまたヤマ場である。宮本はシュートボールを内角ギリギリに決めて長嶋を追い込んだ。三球目、宮本の速球は長嶋の肩よりちょっと上をうなって通った。絶好のウエストボールだ。長嶋のバットは一瞬くるっと回った。しかし判定はボール。西本監督は鋭く主審に詰め寄った。約3分後、マウンドに戻った宮本は3つのボールを出したが、外角低目の速球で長嶋を三振に切った。宮本の右腕が勝った。

その時、王が二塁へ走った。三塁から土井も本塁へ突っ込む。二塁手に渡ったボールは捕手に返った。土井はタッチアウトか。いや、岡田主審の手は横に広がった。セーフだ。いきり立つ岡村。主審の退場命令。飛び出す選手。もめ抜いたあとガッカリと肩を落とした宮本を不運はなおも襲う。二死1・2塁で阪本が球をはじいた。森のゴロは平凡だったが、これで同点。
三回までの宮本の出来からみれば予想もつかない事態である。カーブ攻めでうるさい高田を打ちとり、ストレートだけで末次を封じ込むほどの出来ばえだったのに。

しかし巨人の強さはこれら幸運のきっかけをより深く呼び込んだところにあるのではないか。岡村が退場になって宮本の呼吸が乱れたスキを国松、末次が適時打、遊ゴロ失のあとに代打槌田と高田も初球をねらい打って引き離したあたり、やはり選手に底力がなくては出来ぬ芸当だ。
巨人は6回にも阪急守りの乱れに乗じ加点。七回金田が打たれると堀内を出し無死2・3塁の危機をかわした。そしてその裏、不振といわれる王が完璧に近いフォームで右へ打ち込んだ。勝負はこれで決まった。

朝日新聞縮刷版より抜粋しました

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いや、流れって恐ろしいいですね。流れも恐ろしいですが、文中にあるように【その流れをより深く呼び込めるかどうか】が本当の力ですね。超ウルトラファインプレーの次の回にサヨナラホームランを打って勝っても優勝できないチームとダブりましたわthink

この年から野球の試合を見るようになりました(小学校2年生)。松山商業vs三沢・延長18回引き分け再試合は覚えています。吉田義男さんや金田さんの最終年度で、『昔は吉田さんがショートを守っていたけど、藤田平さんが出てきてセカンドに回った』と、オヤジが教えてくれたのも覚えています。でも、日本シリーズは記憶にありません。

ジャイアンツはおなじみのV9メンバー(高田さんが2年目、カネやんがこの年で引退、国松さんが翌年引退)なのに対して、ブレーブスは『なんとなく見慣れない名前』も多いかと思います。そう、【ドラフト史上最強の補強】と言われ、同一ドラフトで200勝投手1名(山田久志さん)と2,000本安打打者2名(福本豊さん・加藤秀司さん)を獲得するのは、この年のシーズンオフのドラフトです。また、ジャイアンツのスタメン出場野手は全員が【ジャイアンツ一筋】で現役を終えたのに対し、ブレーブスは岡村さん・阪本さん・森本さんと3名がトレードでチームを出ています。伸びしろの無くなった高給選手は放出するという、当時のパリーグの世情もあったかもしれませんが、西本監督の勝利へのあくなき追求もあったのでしょうか。退場となった岡村捕手、追加点となるエラーをした阪本内野手は、ご存知の通りフライヤーズの種茂捕手・大橋内野手との大型トレードでフライヤーズへ移籍します(森本内野手がドラゴンズへ移籍するのは上田監督時代)。

土井さんの左足ですが、手元の新聞に掲載されている写真ではセーフか否かは判断がつきません。
これだと【セーフ】とわかるでしょうか。
ただ、岡田主審の立っている位置は最高の場所で、視線もしっかりとつま先とホームベースを捉えてているように見えます。
土井さんの葬儀で当時の監督だった川上哲治さんが、『君なくしてV9はなし得なかった』と言われました。土井さんにとってはファインプレーでも何でもない、冷静に当たり前のことをやっただけなのでしょうが、その【当たり前のことを当たり前に】という姿勢が、V9の下地になっていたのだと思います。

一般社会でもそうですが、スタープレーヤーだけでは組織は機能しません。スターを影で支える人間が必要です。しかし、影で支える人間の評価はスタープレーヤーに比べて著しく低いのも事実です。ジャイアンツがV9を成しえたのは、土井さんのような影で支える選手も評価し、チーム全体を機能させたことにあると思います。

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Comments

言い出したら絶対に引っ込まない、頑固な西本さんらしいコメントですな。

結婚式でコメントした川上監督って、今の私ら位の年齢ですよね(1920年生まれ=V9初年度45歳)。それでV9ジャイアンツを動かしていたのですから、大したもんだと思います。
言った方も言われた方も【らしい】です、確かに。結婚式のめでたい席では、たとえ脇役であっても『影の主役です』位は言うと思うのですが、普通はcoldsweats01
それを受け入れて、脇役の中の脇役に徹した土井さんもすばらしいと思います。

敵ながら認めざるを得ない選手でした。

Posted by: シルク | November 23, 2009 at 05:17 PM

西本さんはこの写真を見せられても「アホか、そんなもんタッチした後になんぼホーム踏んだってアウトに決まっとるやないか!」の旨の発言で一蹴した…と聞いております。

川上監督といえば、土井さんの結婚式で主賓として「土井君は脇役です。名脇役を目指してもらいたい」旨のスピーチをしたそうで。
この内容、言った方も言われた方も「らしいなぁ…」ってイメージですかねcoldsweats01

Posted by: 0223. | November 23, 2009 at 04:07 PM

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